グルジェフに関して(FI個人レッスンのプラクティカム体験記)

さて、最終の仕上げの4年目に入り、今回のセグメントから個人レッスンのプラクティカム(演習)が行われました。

同じ養成コース生が、お互いの知人友人を誘って講習会場まで出向いて頂き、クライアントになって頂き、私たちの養成コース生による個人レッスンを体験していただきました。
(体験にお越し下さったヨーコさん、ヨシザキさん、ありがとうございます!)

そして、このプラクティカムはプロになるための実践ですので、施術するのは自分が誘った知人友人ではなく、初めて出会う人に行うことになっています。

私が担当させて頂いたのは50代男性、中背のがっちりとした体格の方でした。
身体表現で有名な故・竹内敏晴氏のワークなどを体験してこられた方で、現在はインプロヴァイゼーション(即興表現)をされている方です。

施術を行う前にインタビューから入ります(この行為もあえてカウンセリングとは名付けられていないところがミソです)。

今回は初めての個人レッスンのプラクティカムということで、当日いきなり出会ってインタビューをするのではなく、個人レッスンを迎える前に、前もって体験クライアントの方に電話をして、出会う前にお互いに電話で知り合うというところから始まりました。

前日に私のクライアントに電話をさせて頂きました。

他の方はみんな「せいぜい名前や軽い自己紹介をする程度だった」とおっしゃられてましたが、その方はなんと「フェルデンクライスではグルジェフ・メソッドをすると聴いて...できればそれを体験したくて...」とおっしゃられ、びっくりしました!

グルジェフを知っているなんて、さすが身体表現に関わっておられるだけに詳しいのでしょう。

グルジェフというのは心理学を学んでおられる方には馴染みのある人名かもしれません。

エニアグラムという人間を9つのパターンに性格分析された方です。

また著名な音楽家や芸術家に与えた影響も多く(ジャズのキース・ジャレットも影響を受けている!)、20世紀最大の神秘思想家と評されたり、オカルティストと呼ばれたり、多方面から多様な評価を受けている人といえるでしょう。

(詳細に興味のある方は、Wikiペディアなどをご覧ください)

プロになるための実践第一回目にして、いきなりハードルの高いクライアントが来た気がしました。

そしてまずクライントに誠実に断っておかねばならないことがありました。

 

モーシェはグルジェフの考えややり方に多少なりとも影響を受け、フェルデンクライス・メソッドの体系を作りましたが、だからといって、フェルクライス・メソッド = グルジェフ・メソッドではない、ということを。そして、グルジェフ・メソッドそのものをあなたに個人レッスンすることは私にはできないが、モーシェがそのグルジェフの影響を受けた片鱗のある要素のレッスンをすることはできる、と。

 

それはつまりモーシェがグルジェフから影響を受けた重要な要素、マッスル・コンフュージョン(筋肉の混乱)させることによって、あなたの身体の動きの機能の分化と統合を目指すものです(と、相手に不安を与えないように、あえて言い切りました)。

フェルデンクライス・メソッドの創始者であるモーシェ・フェルデンクライスは、確かにグルジェフの影響を受けたということを二年ほど前の授業の1コマで聴いたことを私は幸いにも印象深く覚えていました。そのときのレッスンも明らかに覚えていたからこそ言えた言葉でした。


当初、初めて耳にしたグルジェフグルジェフ・メソッド、その時の授業でノートにとったメモのキーワードをここにアップしてみましょう。

 

グルジェフ・メソッド
ポリズミック・ムーブメント
身体の12個 違う部分を違うリズムで全てバラバラに動かすことが出来る
それによって溜まってくるストレス
突然それができる瞬間がみつかる

全てが統合されて混乱がない

自分が純粋な意識になる←ストレスを与えることによってでてくる

自分のマインドが拡大されるのか

混乱して凍りついてしまうのか

フラストレーション → 自分の意識を高めるのに意味をもつ

 

 

グルジェフ・ムーブメント

当時、ヨーロッパ中にひろまった

アメリカ、日本ではあまり知られていない

東欧、中東欧、イギリスあたりに影響を与えている

 

ピーター・ブルック 演出家 モーシェの友人

映画「注目すべき人々」1960年か70年代はじめの映画

戦争前のアフガニスタンで撮った映画

戦争でロシアがくる前の映画

グルジェフアフガニスタンで長く過ごした

参考動画

 


神聖舞踏 - YouTube

↑映画「注目すべき人々」より(ありがたいことにYouTubeにありました)

 

筋肉を混乱させる muscle confusion

 自分のカラダを発達させるノリモノとして(たぶん精神を、という意味で)

 

グルジェフ 

エニアグラムを展開した人でもある 9つのグループ

動き方 スタイルが自分自身を変えてしまう

全ての国 文化的に同じことをしている

伝統的な演劇、シアターがある

特徴的な性質をもつ

フロイトから始まっている

ウィルヒム・ライヒ

キャラクター・タイプ発達させていった 世界中にひろまっている

 

動きの質

気づきというのはどういう在り方で我々のパーソナリティと繋がっているか

 

マッスル・コンフュージョンを通して

筋肉を混乱することで 脳は可塑性を持っている

新しいニューロンを作り出される 

(註※ここグルジェフに影響を受けたモーシェの一番おいしい部分だと思います)

 

知っている動作、同じ動作の反復は 運動神経系 同じことしか強化されない 

それのみ

 

筋肉の混乱を使う

脳の可塑性を使う

新しいエクササイズを作ってゆく

われわれは新しいエクササイズのはじまりにいる

今までのエクササイズは、産業文化の産物

工場の組み立て作業 単調・反復運動、ロボットの方がいい仕事をする

 

動きの遊び は、より早く脳を発達させる

 think by

ビジュアルでみてやるのと違う

見て聴いて感じてせなあかん どういうふうに?

 

変化はエクササイズではじまるのではない

数学と哲学からはじまる

建築 新しいデザイン、新しいものの考え方

1950年代にはじまっている

スイス、南ドイツでは1930年代にはじまっている

 

フェルデンクライス・メソッド ゆっくりすすんでいる

機会時代 産業社会 「モダンタイムス」(チャップリン映画)

チャップリン...非直線的動きをする人だった

 

グルジェフからはじまった講義のメモはここで終わっています)

 

クライアントのリクエストに対して、あらためて当時のノートからグルジェフのことを復習しましたが、よりモーシェが作ったフェルデンクライス・メソッドを今の段階においての理解を深める助けになりました。

 

またあらためてこのコースの教育プロデューサーであるフランク・ワイルドマン博士の博覧強記ぶりにノートを読み返して思います。

我々が常に授業の途中でその世界の広がりについていけずに(?)眠くなったりすることも(笑)。そのときには理解できなくても、なんとか先生の話をメモにとることで後になってこんなに役にたつものなのだと感心もしています(ですが、フェルデンの授業では基本、ノートをまめにとることは薦められてはいない。自分に必要なものだけが脳に残るとされているからだ)

つい脱線しました。

 

二年目の授業でグルジェフが紹介されたのは、フェルデンクライス・メソッドの通称「エジプシャン・アーム(エジプト人の腕)」というATMグループレッスンの後でした。

それはまさにグルジェフの12個(とまではたぶんいかないのですが)の箇所を同時に全くべつべつの方向に動かすという要素を受け継いでいるようなものでした。

マッスル・コンヒュージョンを通して脳の可塑性にアクセスする

つまりそういう個人レッスンの組み立てをすればよいのだ!と私は急に興奮しました。

 

いっけん難しいクライアントの要望に(まさにまだ卵の段階の養成コース生にとって!)思えますが、私は燃えました(笑)。

なんだか凄くアイディアがいろいろと浮かんで来たのです。

 

例えば太いローラーを二本使って、テーブル(寝台)の上で俯せになってもらい、相手の右側と左側の腕と足の付根に当たるようにそのローラーを縦に敷いて(二本のローラーの線路の上に胴体両脇を乗せてもらい)、カラダを不安定状態で肩甲骨と股関節部分を本人も若干混乱する方向性で(不快にならない範囲で)動かしてみるとか...。

これは同じ養成コース生の武術をやっている方に、プラクティカム前に実験させてもらいましたが、「彼の身体能力だからこそできる」内容だったので、実際には使いませんでした(笑)。

それで一番安全にエジプシャン・アームの動きをしてもらえるように工夫して、本来グループ・レッスンである内容をそのまま私流に個人レッスンに置き換えてみました。

 

左右の腕も肩甲骨も頭の動きも目の動きも股関節、膝、足首の動きも分化させながら統合したものになるようにテーブルの上で手助けしました。

またさらにその複雑な動きの中であえて頭と目の向きが反対方向になるように目の動きも誘導しました。かなりマッスル・コンフュージョンを誘因させていく内容でした。最後は統合しやすい方向で。リファレンスの動きとして最初にやったエジプシャン・アーム
の動きと今の感覚の違い。やりやすくなったかどうか。

 

はじまる前はとても緊張していました。複数の同じ同期生が見守る中、個人レッスンのプラクティカムが終わったあと、なんともいえない達成感がこみ上げてきました。自分の手のあて方、相手との呼吸のあわせ方、間の取り方、セルフ・ユーズ、セルフ・オーガナイズ、アイディア、今の段階の自分にできること全て出し尽くした感がありました。緊張よりも楽しかった!です。

クライアントになってくださった男性は来た時は目の疲れや背中や肩のこわばりがあるとおっしゃられてました。今朝方に片足がつったそうで、少し歩きづらそうでした。

終わったあとにどんな感じですか?と伺うと、カラダが軽くなった感じがある。

視界が広がったとおっしゃられました。
歩いていただくと最初のときより歩きがスムーズになって見えました。

 

プラクティカムが終わり、クライアントが会場を退出したあと、フランク先生からみんなの前でフィードバックをいただきます。

私がフランクから頂いた言葉。

「Chizukoのクライアントは...フェルデンの会場に来てグルジェフを習いたいという、まるで八百屋に魚を買いに来たような難しいリクエストだった。この困難なケースに対して、Chizukoは....

 

例えば、芸術に対して、こういうところが素晴らしいとか、ここが凄いとか、そういうことが難しいように(そういうことに意味がないように)、今日のchizukoのFIもそうだった。

全身でセルフユーズしていた。Chizukoは不安をもっていなかった。怖がっていなかった。触手によって、相手が自分のリクエストを忘れるくらい深いところにアクセスしていた。相手の中に入っていくことに成功したのでよかった。

 

とても創造性があるFIだった。クリエイティビティ...
今までトレーナーをやってきて"最初のプラクティカム”でこれほど創造的なものは見たことがなかった。自分(フランク)の初期の頃を見た気がした(このときフランクが目を潤わせたので私は驚きと感動しました)。

 

あなたは最初(この4年のコースがはじまった頃)、会場の隅にいて、とてもナーバスな感じだった。今は違う、なにか弾けはじめたね。この変化...(フランクの目が赤くうるむ....指導者としての涙?)、この調子でいけばよい。

congratulation! 」

 

うろ覚えですが、だいたいこんな感じの評価のお言葉をいただきました。

いままで、たくさんのHabitによる残念な失敗を犯してきたわたくしですので(←なにもこの4年のコースの中だけでなく人生においても)、ほんとうに青竹の成長のようにひとつ節を乗り越えたような嬉しい有り難い体験・経験でした。

 

フランクに「創造的だった」「この調子でいけばよい」「おめでとう!」と言って頂いたことが何より嬉しかったです。

 

この4年のコースに通い始めた頃の私は、いろいろあって、人生最大の心理的危機を向かえていたといって過言ありませんでした。またそういうことがなければ、ある意味、フェルデンクライスをはじめていなかったかもしれません。

 

最低の心身の状態からスタートした私は、最低になる前のもとの私よりも、ずっとよい状態になって今を過ごしている。それを深く感じるが故に教育者・フランク先生の偉大さ、寛容さに、深く感謝の念が湧いた瞬間でした。

 

その日はちょうどプラクティカム最終日だったので、終わった後に軽くノンアルコールの乾杯の時間がフランクや主宰の里佳先生らの粋な計らいによって設けられました。

そのときに「フランクを泣かせた」と二人の男性に声をかけられ、くすぐったかったです。

 

ほんとうにフェルデンクライスの何も、なにひとつ知らなかった、わかっていなかった私を、演習ができるまでに育てて頂き本当にありがとうございます。

フランク先生をはじめ、今までご指導くださったステファニー先生、ペトラ先生、ルーティ先生、ステファン先生、そして主宰者である里佳先生、仲間、全ての方々に深く感謝しています。

まだまだはじまったばかり。これからが本当のスタート。
今まで以上にどうぞ皆様、よろしくお願い致します。